「最近、ボリスとお姉さんがいっしょに来ることが多いよねぇ、兄弟。」
「同じところに住んでるからね。それにしても仲良すぎだけど。」
面白くなさそうに呟いた片割れに、やっぱりディーも自分と同じなんだ、と思う。
「ずるいよね、羨ましいよ。」
「うん、ずるいよずるいよ。羨ましくてしかたないよ。」
ほぅ、と息をついて想い人の顔を思い浮かべる。
「お姉さんとずっと一緒にいられるなんて………。」
「ボリスとずっと一緒にいられるなんて………。」
はた、と動きを止める。二人で顔を見合わせて、何かおかしいな、と思った。
「えっ、ええっ、えええっ、兄弟、ボリスが好きだったの!?」
「兄弟こそお姉さんが好きだったなんて、僕聞いてない!」
言わなかった。だって、いつだって僕と兄弟は同じだったから。今度も、好きになった人が同じだって疑わなかったんだ。
「僕こそ聞いてないよ。何時から、ボリスのこと好きだったのさ?兄弟。」
ボリスとの付き合いはそれなりに長い、なのにそれに一度も気付かなかったことがショックだった。
兄弟のことなら、何でも分かってるって思っていたのに。
「ボリスとお姉さんがいっしょにここに来るようになってから。なんだかちくちくして、いらいらして、お姉さんが凄く羨ましくて、気付いたらボリスのことばっかり考えてて………。」
それは、僕がお姉さんのことが好きだって気がついた時と一緒だ。恋に落ちた瞬間まで一緒なのに、どうして僕らは別々の人を好きになったんだろう。
ぞくり、と背中が震えた。
僕たちはもう二人ではいられない。
「ねえ、兄弟はボリスに好きだ、って言われたことある?」
「ないよ。兄弟は、お姉さんに?」
「ううん。つまり、僕らは片思いなんだね。兄弟。」
そのことに安心する。まだ、僕らは互いの代わりになれる。
だけど―――
「なあ、“ダム”。」
僕の心を読んだかのように、ディーは切り出した。
「もし、もしもの話だけど。ボリスが僕のことを好きだって言ってくれたら殺しあおう。」
背中が震える。“双子”として生まれた僕たちが唯一のものになるには、どちらかが消えるしかない。
「いいよ、“ディー”。でも、僕がお姉さんに好きだと言ってもらって殺し合いをする方が先だと思うけどな。」
恋が叶ったら、きっと僕らは唯一になりたくなる。間違えられたくなくなる、自分の好きな人を愛してはいない片割れとは。
「楽しみだね、兄弟。」
「そうだね、殺し合いの日が楽しみだよ、兄弟。」
うっとりとその日を思い浮かべる。
生き残れば、アリスにとってただ一人の“僕”になれる。
死んじゃっても、きっとお姉さんなら悲しんでくれるだろう。
どっちにしてもロマンティックだ。
その日は近いのかもしれない。ボリスは僕らを間違えるけど、時々間違えない。その時は決まって“ディー”にじゃれるように、幸せそうに抱きついるから。
(いいなあ、お姉さんもその位僕のこと好きでいてくれたらいいのに。)
片割れの気持ちの先も分からなかった自分には、想い人の気持ちも分からない。
ただ夢見るように焦がれている。
恋が叶う日を。
殺しあうその瞬間を。