もしもこれがと呼ばれることがなくても



最初は、ただの興味だった。
クローバーの塔に腕利きの剣士がいるって。
名前はグレイ=リングマークといい、首に蜥蜴の入れ墨があるところから通称「蜥蜴」と呼ばれているらしい。

「へえ…そんな奴がいるなら1度手合わせしたいもんだな」


常々そう思ってはいたが、それは程なく叶えられることになった。
退屈でしょうがない日常に現れた、有る種愛おしいとすら思えるような興味の対象。




町中でみかけた全身黒ずくめの男、首には蜥蜴の入れ墨。
きっとあれが噂の男なのだろう。どの程度の腕なのか試してやろうと思い不意に斬りかかる。

殺気に気付かれ、高い金属音が鳴り響き剣は容易くき受けられる。
勿論本気で斬りかかった訳ではないが、腕利きというだけ有って判断能力は流石というべきだろうか。


「……誰だ、お前は?」

「俺はエース、ハートの城の剣士だ。あんただろ?ナイトメア付きの、腕利きと評判の剣士って」

「腕利き…かどうかはしらないがナイトメア様付きと言われているなら私のことだろうな。
それにしても、いきなり斬りかかってくるとは……さすがあそこの女王の部下って所だな」

「いいじゃん、俺の暇つぶしに付き合ってよ」

「意味が分からないのだが……私の方はお前とやり合う理由もない」

「俺さ〜暇なんだよね、さくさく殺しちゃうのもつまらないしさ。たまには殺すか殺されるかのスリルが楽しいと思わないか?」

「狂ってるな……」

そういいつつも蜥蜴は楽しそうににやりと口の端を上げて笑う。
どうやら退屈していたのはこっちも同じだったらしい。




それから、あいつとは何度となく手合わせした。今では顔を見れば一触即発の雰囲気にすらなる。
ガキンと剣がぶつかり、ビリビリと手が痺れる。
いつその均衡を崩すかをお互い伺い、1瞬の隙をつかれて剣の切っ先が目の前をかすめ髪の先を削りハラハラと舞う。
命のやり取りをするという、そのギリギリ感が俺を掻き立てぞくぞくさせる。
殺すか殺されるか、そのスリルがたまらない。

言葉を交わさずとも剣を交わすことでお互いを理解し、そして惹かれあう。
いつかあいつを殺すことを夢見て、あいつの手にかかって殺されることも悪くないとすら思う。




俺は狂おしいほどに執着している。多分、「好き」よりも「恋」よりも強い感情。
これはきっとどちらかの歯車が止まるまで続くのだろう。