彼にとっては、つまり世界そのものだった。

「大好きだ!ブラッド!」
いつものように指の先から耳のてっぺんまで好意を溢れさせてエリオットは告げる。
ブラッドは手元の書類から目線を外さずに返した。

「私はお前の好きな人参ではないのだがな。」
淡々と言われた言葉に、エリオットは首を傾げる。
長い耳がぶらりと揺れた。

「そりゃ違うだろ。俺はブラッドのこと食べたいなんて思わねーし。」
エリオットの言葉に、ブラッドの口元が薄く歪む。
かたり、良く聞こえる兎の耳には、その音がやけに響いた。

「私は、お前のことを食べてしまいたいと思うがな。」
滑らかな感触がエリオットの顎の下にある。
上向きの視界で、ゆっくりと落ちてくる空よりも深い色をしたブラッドの瞳を見つめていた。

「ブラッドが食べたいなら俺はいいよ。えっと、どうぞ召し上がれ?って言うんだっけか、こういう時。」
幸せそうに笑って、エリオットは無防備に喉元を晒す。
その喉元にがぶりと跡を残すほど噛みついてから、ブラッドは唇を重ねた。
唾液が混じって、舌が絡みついて、境界が曖昧になる。

世界を食べているのは、一体どっち?




世界を食す