空に還す                  



やはり陽だまりの下では死ぬ事など叶わなかった。
まぁ元よりそんな生暖かな場所で息を引き取る気はさらさら無かったが。
自分には何処かも分からないこんな路地がお似合いだ。薄気味悪く異臭が際立つ、白を塗りつぶす自らの「赤」

(最高の舞台じゃないか。)

ふっ、と哂って見せれば、自然とそれが目に入った。
この場所では僅かにしか見えないが、出ればさぞや美しい青が広がっていることだろう。
快晴とまではいかないが、此処最近の天気の中では間違いなく最高峰だ。
まるで自分の死を喜んでいるかのようなそれに眉を顰める。そして苦笑するように笑みを深める。
神に愛されなかった男の末路には相応しい最期だ。後悔などは、しない。断じてするものか。
ただ、思い残すが無いのかと聞かれれば嘘になるかもしれない。嘘であればいいと思うが、どうにもこうにも瞼の裏から離れてくれない馬鹿の姿が一つあったりする。

大空のようだ、と。一瞬、日の光がその金の髪が照らされて、そう思ったことがある。
思った瞬間直ぐにその思考を消そうとしたが、その時間違いなくそれを感じてしまったという事実は消し去る事など出来ない。
晴れ晴れとした青を眺める度に嫌でも思い出すので、知らぬうちに夜を好んでいたというのは秘密だ。
今頃はその長い耳を揺らして自分を探し回っていることだろう。銃声をかぎつけてもう直ぐ来るかもしれない。
看取られてたまるものか、自分の倒れる姿など、弱る姿など、お前に見られるくらいならこの空に抱かれて逝くほうがよっぽどマシだ。

自らの白が赤に染め上がっていく。体温が下がり、急激に意識が失われていくのが分かる。
呆気ないものだと、他人事のように思いながら、やはり思い浮かぶのは馬鹿な兎の顔だ。
よく見れば、いつもの笑みはない。涙を耐える子供のような酷い顔をしている。情けない表情だ、そんな事で自分の居なくなった組織を支える事など出来るのか。
ついて来い、と。ついていく、と。死を迎える時は共にと願った兎を自分は笑って裏切ろうとしている。
だが後悔などしない。断じてするものか。それが自分に出来る最期の反抗だと、お前に依存しない為に手段だと、お前は決して気づく事はないだろうが。

(お前は独り寂しく陽だまりに抱かれて逝けばいい。)

周りの景色が白に変化する中、不気味なほどに青を保つ空へと目を向ける。
やはり浮かぶその阿呆面に、自分は笑みを深めてかえしてやった。