フラッシュバックって本当に起こるのだろうか。
彼は起こると思っていた。それがあると信じていた。セカイに宇宙が無くとも、過去の記憶は思い出されるべきで、それは一枚の活動写真のように瞬く間に去っていくような物。まぶしいけれど懐かしい記憶。けれど、その記憶をもし、自分の中の時計が持っていたとしたら、随分と浪漫が無いなと、嘆息した。モノクロームの世界が、極彩色に変わる日を彼はずっと待ち望んでいて、それが訪れた日には壊れてもいいとさえ考えた。思いつめた。
そして彼の中に眩しい光が訪れた日、憮然とした顔で思いつめて、眉間には落ちない皺が寄っていた。思わず指で伸ばしたくなるようなそんな気分。思い出したい記憶があるのだけれども思い出せない記憶があるようなもどかしい感じを彼は抱く。話しかけると嫌がりながらも返事を返してくれた。短い会話も成立するようになった。自分が楽しいと思うことを共有はできなかったけれども、理解してくれようとはしてくれた。なんて優しいんだろう。感激して、また、何か失ったものを思い出したような気がした。
赤い女王に仕えなければいけないと言われた瞬間の靄が完全に晴れたようだった。柔らかく、穏やかに成れると思った。自分が今まで迷っていたのはこの人に逢うためなんじゃないかと思った。それを行ったら控えめに行き過ぎだと言われ、そうじゃないかと考える。自分はどうも思い込みが激しいようだ。
それでもいい、どうでも良かった。
ただこの人の傍に居られるっていう意味があれば良いと思う。
夜の空を見上げ、また起こったフラッシュバック、そして極彩色のこのセカイ。