綺麗な人だった。ただ、そう思う。
細く整った鼻筋から顎のラインは鋭く首を通って鎖骨に落ちる。呼吸が苦しそうに見えたから彼の首をしめつけていたスカーフをほどいてみせる。幾分か表情が和らいだように見えたのはエースの感傷か。
そのスカーフに唇をそっと寄せた。鼻を撫ぜたのは薔薇の匂いと混ざった彼の匂い。くらり、と眩暈がした。薄い布地は持ち主の柔らかい肌を連想させた。あのエースを受け入れない鋭い瞳と裏腹に、エースにたやすく溺れる肌の甘さと言ったら!
たまらくなったエースは目の前に横たわる人の、露わになった――エースがスカーフを解いて向きだしにさせたのだが――胸元に舌を這わせる。未だ甘いその匂いでいっぱいになる。
何故か涙がでそうになった。どうしてだろう、永遠なんてないと知っていたはずなのに。
ぎゅうとスカーフをきつく握った。こんな、風に煽られたらすぐに飛ばされてしまうようなモノでもきっと永遠を望むことは出来るのに、どうしてあんなにもしっかりとした存在を持ったブラッドに、永遠が約束されていなかったのか。どうして、どうして。
スカーフを離し、空になった両腕でブラッドの身体を抱きとめる。ふわりと宙を舞った髪から零れた蜜の匂いだけが、腕に抱いた静かな物体が、いくらキスをしても黙らないあの男であったという風に主張していた。






永遠なんて気持ち悪い

花咲ミチルさま