ざあざああと雨が降り私はそれを眺めるだけだ。ごほん、ごほんとナイトメア様が咳をしたので私は彼の背中を撫でた。彼は少し寂しそうに窓から外を見つめて口を開いた。
ざあざあ、ざあざあ
「めずらしいな、雨が降るなんて」
ざあざあ、ざあざあ
「そうですね。天気が良いのは当たり前のようなものですし」
私がナイトメア様のように窓から空を見上げると、まるでバケツをひっくり返したような土砂降りで、空は絵の具を好き勝手に塗りたくったような色をしていた。私はふとあの女王が嫌いそうな色だと思った。
かしゃんと音を立てて、ナイトメア様の食事の後片付けをする。今日は天気と違い彼は調子が良いようで、すべてたいらげられていて私は少し安堵した。もともと量は少なかったのだが、それでも安堵する。安心する。この人が生きているのだと感じられる。だから私はそれを嬉しく思った。ナイトメア様は知らないのだろう。こんな私など。
「なあグレイ」
ナイトメア様がベッドの上で上半身だけを起こし、相変わらず窓の外を眺めながら私に問うた。
「なぜ、よりにもよって今日雨が降るのだろうな」
今日はアリスと遊びに行く予定だったのに、とナイトメア様は呟いた。その言葉は雨音に消されそうにながらも私の耳に届く。・・・私は知っていた。数日前からナイトメア様が今日と言うこの日を楽しみにしていたということを。
「・・・きっと、誰かが泣いているのでしょうね」
まるで私の心のように、とは私は言えなかった。